atelier shot 2012. 3. 23

 
  
 映画「八日目の蝉」を遅ればせながら見た。内容はとても秀逸。自分ではどうすることもできない環境の中でうまれた心の問題は考えさせるものがある。作品のテーマは色々あると思うが私が感じたテーマは、一言で言えば「三つ子の魂百まで」。三つ子の魂を作る環境は本人自ら選べないし作り得ないのだという事。記憶に残る劇中の一場面、主人公秋山恵理菜(子供時代)に実の母親が子守歌に何が聞きたいか尋ねると、恵理菜はお星の歌が聞きたいと答える。実の母親は一般的に子供が聞き歌う曲「キラキラ星」を歌い聞かせるが恵理菜にとっては違った。恵理菜にとってのお星の歌は、連れ去り犯でその時の母親だった野々宮希和子が歌ってくれた「見上げてごらん夜の星を」だった。一般的な生活の中普通に幼稚園保育園に通っている子は「キラキラ星」だったに違いない。しかし恵理菜にとっては違った。これこそ三つ子の魂百までと言える。歌だけに限らない、見た自然の美しさ、遊んだ場所の楽しさ、仲が良かった仲間、そして愛情、などなど・・・。その時の記憶が引き出しに仕舞われ、自分が自分たる事を意識無意識に関わらず確認する時その引き出しが開く。
 私達が作る建築空間、つまり住宅空間も同じ事が言えるのだろうなあと思う。未来の日本を担うのは作るのは私達世代では無く今の子供たち、これから生まれる子供たち。そんな子供たちに、自分では選べない作り得ない「三つ子の魂」のために常に意識を持っている必要がある、とあらためて感じさせてくれた映画だった。(しかしタイムリーな映画は劇場で見なくてはダメだよね・・・)
 ちなみに写真は事務所の壁面に取り付けてある軸組模型。父親が大工職人だった私は小さい頃から建築現場、作業場が身近だった。結局父親の背中を見て育った自分がいるのだなあと。これも三つ子の魂か・・・。(ひと月に2回の更新!温存しておくといつになるかわからないのでね(苦笑)青天の霹靂のいと)
 
 
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