atelier shot 2007.4.23

  
 新潟市芸術文化会館劇場専属ダンスカンパニー「Noism」の公演を初めて見た。前々より見てみたいと思っていたがタイミングが合わず、ようやく見ることができた。
 コンテンポラリーダンスそのものもあまり見る機会がなかったが、今回の公演は若手建築家田根剛氏が空間を担当し、演出の金森氏とダンサーとのコラボレーションが見事なまでに完成度を高めている。パフォーマンスを見て感じたことは「人間は動物であり、そして人間である」ということ。動物は言葉を持たず(鳴き声はあるが)まさにボディーランゲージでコミュニケーションをおこなう。コンテンポラリーダンスも同じく、体で肉体の表現で何かを伝えようとする。そして完成されたパフォーマンスからは何かストーリーさえ感じる(実際ストーリーがあったのだと思うが)。この生命活動以外でのボディーランゲージ表現ができる動物は人間をおいて無い。肉体による表現は言語を持つ前の人間はあたりまえの事であったろう。その人間のルーツを追求し表現するコンテンポラリーダンスの芸術性を垣間見たような気がする。偶然にも数日前に「フラガール」という邦画を見てフラダンスの振りが手話のような心情表現だという事を知り、言語に頼らないランゲージを今も人間は持ち得ているという事も再認識。
 建築作品を作り上げるときも同じような気がする。空間、ディティールという言語ではないランゲージを駆使し、もっともルーツである「雨風をしのげる場所」「子孫育む巣」から、制作者創作者の意識を表現する場に展開する。削ぎ落としたところが見えたときに新たな創造が生まれるという感覚をこのダンスカンパニーのパフォーマンスを通じて再認識する事ができた。
 人は言語という表現方法を持った時から動物の中では最優位に立てたかもしれないが、そういった事に溺れる事で動物以下の存在になってしまう。何事も人間の動物たるルーツを見極め、そして人間らしくあるためのクリエイティブさを日々意識していたい。
 いや〜久々です、いつの間にか芸術評論みたいな文章になってしまってるけれど、いつも新たな刺激はしっかり建築的な事へ昇華されてるのでした。(いと)
 
 
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