メディア掲載~新潟日報朝刊「甘口辛口」2020.10.27~
第七回 新潟のお正月お節重は近年の事。食の地域性や季節感はやはり重要です。
<ハレの日>
「子供の頃、わが家の年末年始にお節料理が登場したことは無かった。大みそかはその年最後のごちそう。刺し身の盛り合わせや鍋料理に加え、普通は年始に登場するのっぺ汁(わが家では「おおびら」と言っていた)も食卓に載る。鮭(さけ)の切り身が山に盛られ、「何切れ食べても叱られない」という特別感が、大みそかにはあった。
育った新潟市江南区は信濃川も阿賀野川もそう遠くなく、地元の鮭はハレの日のごちそうという位置づけだったのだと思う。中央区の友人は、ハレの日は鶏の半身揚げだったという。シモ(同区下町地区)の老舗で半身揚げ発祥の店の物。半身揚げを新潟の名産にまで押し上げたこの店は、歴史の深さが加わり、しょっぺ店としても不動の地位に君臨する。
時節に関係なく、何でも食することができる時代になった。しかし、せめてハレの日のごちそうくらいは地域色や季節感が強くあってほしい。それが遠い友を食でもてなすことにつながるのだと、いつも思っている。」
西の横綱「せきとり」
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