atelier shot 2004.2.8

  
 建築作品にはすべて意識と意図がある。住宅設計は依頼主の要求と嗜好に私なりの解釈や私の嗜好がミックスされてできあがる。相手や条件によって一見全く違うできあがった建築も、共通の私らしさという物があって、それがあるからこそ依頼主の条件があっても作品と呼べるのではないかと思う。
ところで作品の意識や意図がHP上の写真からは伝わりづらいと思うので、たまに説明など…。
 この住宅は老婦人2名を含む3世代2家族同居の家。ご夫婦に20代の長男長女、ご主人の母上と奥様の母上に弟さんといった7人構成。常時家にいる人が大勢いるので、家の中でプライバシー守る場所を造りながら人の気配を感じられるよう心がけた。居間とその上に吹き抜けたパブリックスぺースを中心に、周りにプライベート空間を配置。プライバシイーを保ちつつお互いが感じられる住宅になった。それから最近心がけていることは、今だけではなくこの先時間の経過に耐えられるようプランする事。この家のように大家族のために設計した建物は、以降人員構成が替わる事も意識に入れる必要がある。これからの建築はスクラップ&ビルドではなくリノベーションして使い続ける必要があるはずだからフレキシブル性が重要。それにはそういったプランである必要がある。で勝手に数年後数十年後を想定して、簡単な改造で対応できるよう設計してあるのです。ご夫婦・長男とお嫁さん・老婦人・奥様の弟さん、といった家族構成になったときの使い勝手、ご夫婦が年をとられ・長男家族との二世帯となったとき、など将来を想定し配慮した建築なのです。
 今古い建物を見てこれなら少しの改造で今のライフスタイルに対応できるなと思える建物は昔ながらの日本家屋。襖障子により仕切られた空間は非常にフレキシブルで構造にダメージを与えない。それに比べ近年の建築に多く見られる個室型は改造後の構造に対するダメージや、自由度の低さから開かずの間的物置化している所が多い。建物がながもち長続きするって事は構造上の耐久力のみじゃなく、構成人員ライフスタイルの変化に対応できる建物であるということが大切ですね。それともう一つ、「この建物を長く使おう」「活かそう」と思わせる魅力があること。リノベーションと言ったって、その建物に魅力が無けりゃあねえ。ヨーロッパの建物は、その辺が満足しているので長く使い続けられるのだろうなあ、もちろん和風建築も最近では見直され、リノベーション後魅力有る空間になる可能性を秘めてますけどね。(いと)
 
 
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