atelier shot 2004.4.21

  
 仕事はラフから書き始めてフィニッシュにPCで仕上げることが多い。だから自分にとっての一番の表現手段はラフ。頭の中の事を表に現す手段としてのラフでありスケッチである。頭の中のことを表す方法は色々あって、音楽家ミュージシャンは頭の中に閃いたフレーズをメロディー、コードでいともたやすく表現する。アーティストもそうで、頭の中に閃いたイメージを他のイメージとして表現する。いわゆる抽象表現はこれにあたるかな。頭脳的なアーティストは頭のなかで組み立てられた言語を言語としてではなくアートとして表現する。このアートとして表現された物から言語を読みとることが自分的には好きで、これは推理小説好きからきているのかも。小学生の時はスパイクラブというのに入っていてしょっちゅう謎解きをしていた。だからアート作品を見るときは作家の表現しようとした言語を探ったり頭の中にあるイメージを想像したりして。そうでない時はその作品の似合う空間や組み込まれた空間を想像したりして作品鑑賞を楽しんでいる。アートは難しくないもの。見る人間が見方を掴んでしまえば良いわけです。
 以前薪能のお手伝いをした時のこと、最初は能を見ていると飽きて眠くなったものだった。ある時まわりの人から、「能は脚もとの芸術だから脚もとだけを見ていてごらん」「水平移動の時の頭の位置を見てるとすごいことに気づくよ」「衣装の美しさ違いを見ていてごらん」と言われてから、その様にして見始めたらアッという間に演技が終わるようになった。最近は(と言っても久しく見てないが)ストーリーを理解しようとして見ている。やはり見方次第でものは見えてくるもんだなあと思うのですよ。
 頭の中の表現方法で「話すこと」と「文章表現」はどちらかというと得意ではない。どうも私はイトオ語を話すらしく、理解に苦しむなどと言われることも時折。起承転結で言えればいいものを、承転起転転などで話す事も…。だいたいラフの話から能の鑑賞にきているわけだからねえ。転転々。アリゾナでアーコサンティーという未来都市を造っているパオロ・ソレリの様に、まずは行動という建築家もいるし、安藤さんのように話から人を引きつける人もいる。色々。やっぱ私の得意表現は三次元空間かな。頭の中のイメージ、心地よいイメージを空間に表現するのが一番好きねやっぱ。あたりまえか、それで食っているんだから。(いと)
 
 
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